刺青除去でよくある5つの治療法

刺青除去治療の具体的な方法

刺青除去には様々な治療法がありますが、実際の刺青除去治療の現場では、下記5つが現実的に行われているもののおそらく9割以上で、「5本柱」とも言えるものでしょう。

現実的には、レーザーと切除で8割以上かもしれません。その理由は、施術を受ける側の都合ではなく、この2つの治療法が医師にとってハードルが低いからにすぎません。そのため広告やHPなどでは、この2つの治療で気楽に気軽に、と言ったキャッチフレーズ的文言が氾濫しています。

1.レーザー治療

Qスイッチレーザーなどを使い、レーザー照射によって刺青を薄くする治療法です。1回は数十分程度の治療ですが、痛みが強い事は意外に知られていません。また黒以外にはレーザーが反応しにくいため、赤や黄色などの刺青には不向きです。
レーザーによる刺青治療は痛みがない、安全、と広告している美容クリニックもあるようですが、無傷で魔法のように刺青を消すことができる治療ではありません。レーザーですので、程度の差はありますが、必ず多少の火傷や火傷跡ができます。治療を繰り返すとどんどんレーザーの反応が悪くなり、最終的には、刺青を薄くする、という表現の方が適切かもしれません。
もちろん、他の治療も魔法のような治療はありませんので、刺青除去の際の選択肢の一つではあります。
しかし、「レーザー治療を先に行って、治療結果に不満がある時には違う方法に替えましょう」という医師の考えには賛同できません。レーザー治療ではレーザーによるやけどあとができますので、レーザー後に別の治療を行った場合には、切除・縫縮や削皮、おそらく植皮でもクオリティーが落ちていきます。
「レーザーを行った後に別の手術を行うことで、医師が最大限の手を尽くしているように思われる」「二度売り上げになるので二度おいしい」。そんな考え方には、私は断固反対です。

当院には、レーザー治療による刺青治療後の相談も後を絶ちません。遠方からわざわざ相談に来る方の中にはケロイドなどが残ってしまったケースもあります。しかし、それ以上にレーザー治療自体の根深い問題と感じられるのは、かなり良い治療結果に見える方でも「結構薄くはなったが、元の刺青の形が分かるので消したい」と思っている場合が多いことです。レーザー治療は、何回受けられても刺青の形が皮膚上に見えてしまうことが多いという印象を受けています。医師側では治療が完了したという認識でも、レーザー治療をされた方のほとんどが「治療が途中で終わった」と感じられているようです。

2.切除

手術によって刺青の部分を切除し、縫合する手術法です。主に紡錘形切除・直線状の縫合手術とジグザグ切除・縫合手術の2つがありますが、それぞれを比較した場合にはジグザグ切除・縫合の方が優れていることは形成外科の世界では常識です。紡錘形切除・直線状の縫合手術できれいな直線状の傷あとになる条件は、しわに平行・筋肉に垂直・短い傷で創縁にかかる張力が強くない場合です。この方法できれいな直線状の傷あとになる代表的なケースはホクロやアテローマのような円や球形の皮膚・皮下の良性腫瘍です。円や球状ですので、紡錘形の長軸を回転させて理想的な方向に合わせることができます。皮膚切除の幅も小さいので、短い傷あとで創縁にかかる張力も強くないため理想的です。
一方、刺青は切除のために都合の良い方向・形で入れられていることはほとんどなく、ジグザグ切除手術の方が有利な場合がほとんどです。仮に全体を同じ張力で引っ張ると過程すると、ジグザグ切除手術の方が色々な方向に縫合線が向いていて張力が分散されるので当然有利です。さらに、できるだけ色の着いていない皮膚を温存できれば全体にかかる張力も小さくなり、より有利と言えます。しかし、大きな刺青についてはジグザグ切除による手術でも傷あとに幅ができて赤黒く目立つ傷あとになります。
実際に刺青除去治療の臨床現場で見ていると、大き目の紡錘形切除手術の結果は、目立つ赤黒い盛り上がった傷あとや幅広く目立つ傷あととなることが多いです。また、実際の現場では、残念ながら切除が完全に終わっておらず、分割切除途中となっている患者さんにも数多く出くわします。痛みやしびれなどの自覚症状は他覚所見ではないため定量化もできないので、医療過誤の証拠にもなりえません。ですが、このような状態はクリニック側に問題がないといえるのでしょうか。「患者さんが自分の判断で手術途中にやめたのだからクリニックは悪くない」ということでよいのだろうかと疑問を感じることが時々あります。もちろん、切除法は墨が完全除去できるので、小さな刺青では良い方法に違いありません。

※当院での治療結果
症例1
■紡錘型切除
紡錘型切除

■ジグザグ切除
ジグザグ切除

3.植皮(皮膚移植)

刺青を除去した皮膚欠損部を、別の部分から採取した移植皮膚で補う治療法です。傷跡などをきれいにするための治療ではありません。しかし、手術のバリエーションが多い、いわゆる技術力のある医師が広めの刺青除去において積極的に植皮を行っていることを考えると広い刺青治療法として最適なものの一つであると言えます。ですが医師の技術力には関係なく、ほとんどの場合、傷跡付近が額縁状になって周囲や境界線が目だったり、パッチワーク状に見えたりしますので、決してきれいではありません。
その上、太ももなどの採皮部(ドナー)にも傷あとが残ることを考えると微妙なところはあります。特に広範囲の植皮はパッチワーク状に見えてしまうこともありますし、植皮は接ぎ木のように100%生着するわけではありません。生着しなかった場合にはやり直し手術のために、どんどん太ももなどの採皮部(ドナー)に傷あとが増えて行きます。そのため、大き目の刺青除去では生着率の良いメッシュ植皮を提案されることが多いようです。メッシュ植皮ではウロコ状になりますので、多くが汚い傷あとになります。
当初、美容面をそれほど重視していない総合病院形成外科などで、時々刺青除去を行う場面にメッシュ植皮が使用されていると思っておりました。しかし、実際には有名な美容外科や美容クリニックでメッシュ植皮が行われた、またはメッシュ植皮をを提案されたといった相談も多く、少しびっくりさせられました。しかも、その解説には「ウロコ状になることもあります。」のような記載が多いのです。わたくしは熱傷専門医ですので、広範囲のやけどに対してやむを得ずにメッシュ植皮をたくさん行ってきましたが、ウロコ状以外に見えたことは一度もありませんでした。ほぼ【100%の確率】でウロコ状になるはずです。そのような施術を行ってウロコ状になった場合に、「たまたまあなたの体質でウロコ状になったんだよ」と済ませても良いものでしょうか?こういった事実を見ても、まだまだ刺青治療を美容外科治療と思っていない医師が多いということだと思います。

※当院での治療結果
症例2

他院でメッシュ植皮を受けた患者さんの再治療(削皮)

4.削皮

手術によって刺青を削る治療法ですが、一般的には植皮(皮膚移植術)が丁寧な方法で、削皮(皮膚剥削術)は手抜きで乱暴な方法であるかのように言われています。本当にそうなのでしょうか?削皮(皮膚剥削術)はその方法が非常に様々で、その結果も天国から地獄まで様々です。また、削皮についてネット上に上がっている意見としては、「創口が治るまで数か月を要しケロイド状になることが多い」「植皮よりひどい傷跡が皮膚に残る」・・・といったものです。
きれいに削ることは最も難しいことと言えます。創傷治癒の観点から一つ言えることは、傷が治る(上皮化する)のが2週間前後でない場合には、良い結果となることはないと言えます。この場合には、見かけの問題だけではなく、ツッパリ感・引き連れ感や痛み・かゆみがつよく日常生活にも支障を来すことになります。またそれだけでもなく、将来的には皮膚癌(瘢痕癌)になる確率が高いと考えられますので要注意です。

5.カバーマーク

何とカバーマークを5本柱の1つに入れました。大きくない刺青には、ここぞの時に刺青部分を化粧する要領でカバーマークをすることも選択肢の一つではないでしょうか。水やお湯が付いてもこすらなければ取れにくいと聞いています。ベストな治療法ではありませんが、周囲を説得して取らないということも立派な治療と思います。

その他、皮弁法やティッシュイクスパンダー法(組織拡張器法)などの刺青除去方法もあります。 しかし、幅広く多くの症例に使えるような方法ではなく、ケースバイケースで使用できる場合もある程度の方法です。

■トピックス:削皮について

削皮(皮膚剥削術)は言葉として非常に不利です。それ自体が「皮膚を削る剥ぐ」といったこわい言葉です。それで、意味をぼやかすためにアブレーションというオシャレな言葉が使われることもあります。
一方、レーザーや切除は言葉の作りやイメージとしてのスタートラインがかなり有利です。
レーザーは「手術ではないので傷痕ができない」「回数さえかければ無傷で魔法のように完全に消える」と言った良いイメージがあります。しかし、実際には何回行っても「結局消えない」「途中で終わった」と言ったネガティブな感想を持っている人が多いと思われます。
切除も意外に、墨が完全に取れると言ったスッキリとしたイメージがあるようです。
しかも、大きな刺青でも回数さえかければ完全に取れて一本線になるといった間違った情報があふれています。実際には、大きなものでは幅広く赤黒いミミズバレ状の傷痕となり、痛みやしびれのため治療続行困難となり途中で終わります。

もちろん数多くの医師ができる施術の方が宣伝やキャッチフレーズのような良いイメージの言葉や解説が多くなるので有利です。当然、レーザーは多くの医師が施術可能ですし、切除もかなり大勢の医師が実際に行っています。
この二つと対象的なのは植皮と削皮です。植皮で良い結果を出すことはかなり技術が必要です。また、削皮は簡単にできる反面、良い結果を出すにはおそらく一番難しい手術です。
しかし、不思議なことに植皮の方が言葉としては魔法のような力があります。
皮を植え替えると言ったあたかもリセットされるような間違ったイメージを持っている素人の方も大勢いると思われます。もともときれいにすることが目的の手術ではないので、実際には額縁状に辺縁が目だったり、パッチワーク状に見えたりといった結果となります。
そして、採皮部といって植えるための皮膚を取る部位(太ももなど)も植える部位よりも少し大きな傷痕になります。

削皮は言葉のイメージの壁によって一般に受け入れられにくい施術です。
しかし、大きな刺青治療には削皮を上手く行った場合が一番納得の結果となると考えられ、
削皮は大きな刺青治療の第一選択となる可能性がある手術です。

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